2013年1月

スポーツに学ぶリーダーの素養

一昨年のワールドカップに続き、ロンドンオリンピックでも大活躍した女子サッカー日本代表「なでしこジャパン」の強さの理由の一つが、佐々木則夫監督のマネジメント力であることは、誰もが認めるところでしょう。その要因は彼のリーダーとしての素養の高さなのだと、私は分析しています。

 

佐々木氏からもわかるように、リーダーがチームに与える影響は大きいものです。リーダーとして認められ、信頼関係を生み出すには、リーダーとしての素養が備わっていなければなりません。 指示・命令するだけでも、追い込むだけでも、反対にメンバーに媚びるだけでも、チームのパフォーマンスを高めることはできないでしょう。

 

リーダーとして素養は、ふだんの練習や学習によって身につけておかなければならない技能や知識であり、常に自らの言動や対応の仕方を振り返り、自分がどう変わることによって、メンバーや周囲の人々が理解し、変わってくれるのかを模索することであろうと思います。

 

リーダーとしての素養を5つ上げるとするならば・・・

 

1.リーダーは、「go・stop」を明確に使えること
 リーダーには、なんでも自分で決める「専制型」、なんでも協議し分担する「民主型」、自由にやらせる「放任型」と代表的な3タイプがありますが、少なくともリーダーとしてまとめ役をするには、「go・stop」を明確に使えることです。 例えば、毎日の朝礼をするときに、集合させ、集中させ、伝達事項を徹底させることは重要です。おしゃべりをしていたり、別の作業をしている人がいては時間の無駄になります。こんな時には作業をストップさせ、朝礼終わったら自分の仕事に集中させるといった権限を行使できなくてはならないのです。曖昧を許していることで主導権が奪われ、リーダーとしての旗振り、目標達成役割は持てないのです。

 

2.リーダーは、リスニング・アサーションができること
 下の者から、計画や作業に意見されたりすると、不愉快に思うリーダーは少なくないものです。そんなとき頭ごなしに否定するのではなく、その要望内容を具体的に聞き、その気持ちや効果などしっかり傾聴することが必要です(リスニング)。そして理解したことを確認し、その上でなぜそうしないのかという理由を論理的に説明してあげます(アサーション)。意見を言ってくれたことに感謝を伝えましょう。 時間がないときには改めて時間を作ってでも意見を交わしてこそコミュニケーションが信頼関係に繋がるのです。 「俺に指図するな!」とか「俺は忙しいんだ!」といって、周りの人の話を聞けず、自分の考えを相手に上手に伝えられない人は、リーダーにはならない方がいいでしょう。リーダーは、リスニング力もアサーション力もしっかり磨き、それを実践する時間的余裕の持てる人でなければならないのです。

 

3.リーダーは、メンバーを心から大切に思い、暖かさと慈しみの心で接すること
 なでしこの試合では、途中出場する選手が得点を挙げる場面がよくあります。ここには日ごろから控え選手の練習ぶりや技能をよく観察し、理解している佐々木監督の観察力があります。適切な場で最大の力を出させることを可能にしています。選手もまたそれを知っているので、指名された時には、この場面は自分が一番適切な選手なのだと自信を持ってプレーすることができるのです。 リーダーにとって扱いやすい人や丸投げでうまくやってくれる人ばかりを頼りにしていてはリーダーとしての存在が無意味です。 全メンバーに関心を持ち、その特性、技能、状況などをよく理解するように、日ごろから接する観察力と、一人ひとりを大切に思い、暖かさと慈しみを持って接する心の大きさを育てなければなりません。

 

4.リーダーは、自分を特別扱いしないこと
 大阪市でのバスケットボール部主将だった男子生徒が、顧問から体罰を受けた翌日に自殺した事件がありました。また、指導していた大学の女子柔道部員を合宿先のホテルで乱暴したとして、準強姦罪に問われた事件もありました。 「体罰は愛情の裏返し」と顧問を擁護する意見もあります。「結果を出しているのだから、自分がすることは許されるんだ」という特権意識に酔っているのではないでしょうか。 体罰を行使することなく結果を出せる指導法を探求していない怠慢と言えます。叩いたり、怒鳴ったり、自分の感情をコントロールできない未熟さを反省すべきでしょう。 リーダーは自らを例外にせず、模範となる生き方をしなければなりません。

 

5.リーダーは、苦しい時ほど自分を変えること
 結果が出ない、うまくいかないなど、様々な壁や問題に直面にします。そんな時、メンバーや境遇や社会のせいにしたくなります。 乗り越えられない現実の壁に、これまでのやり方では解決できないのならば、その事態の中心いる自分自身をまず変えることです。 自分の中に眠る可能性を引き出すことを実践することです。 行き詰った発想に縛られていることに気づき、それを逆転させてみる、立場を変えてみる、笑ってみる、走ってみる、机を離れてみる・・・。 気持ちも行動も習慣もどんなことからでも変える柔軟な頭と心と身体が、チームにも良いムードをうみ出し、硬い壁を開いてくれるのです。

 

仕事だけではなく、家族の中で、グループや近隣においても人間関係にはリーダーが必要です。心地よい関係で過ごすには、素養の高いリーダーの存在が不可欠です。 誰かにお任せしないで、自らが良いムードを作る存在になりましょう。リーダーとしての素養は、ふだんの練習や学習によって身につけることができる技能や知識なのですから。


(2013年1月 小森まり子)